バイトテロとは?具体的な例や発生する法的責任などを解説

バイトテロとは?言葉の定義と社会問題化の背景

バイトテロとは?(定義)

バイトテロとは、アルバイト従業員が勤務先やその商品・サービスに対して行う、不適切な行為や悪ふざけを指す言葉です。これらの行為は、多くの場合、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に動画や画像として投稿され、拡散されることで社会問題化しています。

バイトテロには、明確な法的定義はありません。しかし、一般的には、以下のような行為がバイトテロとみなされます。

  • 勤務先の店舗や商品に対するいたずら、破壊行為
  • 不衛生な行為(例:食材を床に落としてから調理に使う、調理器具で遊ぶ)
  • 従業員しか知り得ない情報の漏洩(例:新商品の情報を事前に公開する)
  • 顧客に対する迷惑行為(例:客を侮辱する、個人情報を晒す)
  • その他、企業のブランドイメージを損なうような行為

これらの行為は、個人のモラルの問題であると同時に、企業や社会全体に大きな影響を与える可能性があります。

なぜバイトテロが問題視されるのか?

バイトテロが問題視される理由は、単なる悪ふざけでは済まされない、以下のような深刻な影響があるためです。

  • 企業への損害: バイトテロによって、企業のブランドイメージが大きく損なわれ、客足が遠のき、売上が減少する可能性があります。場合によっては、営業停止や店舗閉鎖に追い込まれることもあります。
  • 社会的信用の失墜: 企業だけでなく、業界全体の信用が失墜する可能性があります。消費者の不安を煽り、社会全体に不信感を広げることにもつながりかねません。
  • 模倣犯の増加: 一度バイトテロが話題になると、模倣犯が現れる可能性があります。SNSでの拡散が、新たなバイトテロを誘発する悪循環を生み出すことがあります。
  • 従業員の負担増: バイトテロが発生すると、企業は対応に追われ、他の従業員の負担が増加します。再発防止のための対策を講じる必要も出てきます。
  • 法的責任: バイトテロを行った従業員は、民事上・刑事上の法的責任を問われる可能性があります。

バイトテロと炎上

バイトテロは、SNSでの拡散によって、瞬く間に「炎上」状態となることが特徴です。炎上とは、特定の個人、企業、団体などに対して、インターネット上で批判や非難が殺到し、収拾がつかなくなる状態を指します。

SNSは、情報が瞬時に広範囲に拡散されるため、バイトテロのような不適切行為は、すぐに多くの人の目に触れることになります。そして、匿名での投稿が可能なため、批判や非難が集中しやすく、炎上状態に発展しやすいのです。

炎上によって、企業は、さらなるイメージダウンや風評被害を受ける可能性があります。また、バイトテロを行った従業員は、個人情報を特定され、誹謗中傷や脅迫を受けるなど、深刻な被害に遭うこともあります。

バイトテロは、軽い気持ちで行った行為が、企業や個人に甚大な被害をもたらす可能性があることを、強く認識する必要があります。

バイトテロの具体例とその影響

飲食店でのバイトテロ

飲食店でのバイトテロは、最も多く報告されているケースの一つです。食材や調理器具を不適切に扱う行為が、SNSに投稿されて問題となることが頻繁にあります。

例えば、

  • 冷蔵庫や冷凍庫に寝そべる
  • 食材を床に落としてから調理に使う
  • 調理器具で遊ぶ、または悪ふざけをする
  • 使用済みの食器を洗浄せずに再利用する
  • 客の食べ残しを食べる
  • ゴキブリなど異物を混入する

などの行為が挙げられます。これらの行為は、食品衛生法に違反するだけでなく、顧客の健康を害する可能性もあります。

コンビニでのバイトテロ

コンビニエンスストアでも、バイトテロが頻発しています。商品へのいたずらや、不衛生な行為が、SNSで拡散されて問題となっています。

例えば、

  • おでんの具材を口に入れて吐き出す
  • 商品のバーコードを自分の体に貼り付ける
  • アイスケースの中に入る
  • 店内で喫煙する
  • レジのお金を盗む

などの行為が報告されています。これらの行為は、商品の品質を損なうだけでなく、顧客の信頼を裏切る行為です。

その他の業種でのバイトテロ

飲食店やコンビニ以外でも、さまざまな業種でバイトテロが発生しています。

例えば、

  • カラオケ店: マイクを舐める、客室を汚す
  • アパレル店: 商品を勝手に着る、汚す
  • 宅配業者:配達物を雑に扱う、荷物を叩きつける
  • ホテル: 備品を盗む、客室を汚す
  • ガソリンスタンド:給油ノズルで遊ぶ

などの事例があります。これらの行為は、企業のブランドイメージを損なうだけでなく、顧客に不快感を与える行為です。

企業や店舗への影響

バイトテロは、企業や店舗に甚大な影響を及ぼします。

  • 営業停止・店舗閉鎖:バイトテロの内容によっては、保健所から営業停止処分を受けることがあります。また、
    風評被害によって客足が遠のき、店舗閉鎖に追い込まれることもあります。
  • 損害賠償請求:企業は、バイトテロを行った従業員に対して、損害賠償を請求することができます。
    損害額は、数千万円から数億円に上ることもあります。
  • 風評被害:SNSで拡散されたバイトテロの動画や画像は、
    半永久的にインターネット上に残り続けます。
    そのため、企業は長期間にわたって風評被害に苦しむことになります。
  • 株価下落:上場企業の場合、バイトテロによって株価が下落する可能性があります。
  • 従業員の士気低下:他の従業員の士気が低下し、最悪の場合、退職につながるケースもあります。

行為者への影響

バイトテロを行った従業員自身にも、深刻な影響が及びます。

  • 解雇:バイトテロを行った従業員は、懲戒解雇されることが一般的です。
  • 損害賠償請求:企業から損害賠償を請求され、多額の借金を背負う可能性があります。
  • 刑事罰:バイトテロの内容によっては、刑事罰(罰金刑や懲役刑)を受ける可能性があります。
  • 社会的制裁:SNSで個人情報が特定され、誹謗中傷や脅迫を受けるなど、
    社会的な制裁を受ける可能性があります。
  • 将来への影響:就職や進学に影響が出たり、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。

バイトテロは、軽い気持ちで行った行為が、取り返しのつかない結果を招く可能性があることを、
強く認識する必要があります。

バイトテロで問われる法的責任

民事責任

バイトテロを行った場合、まず問われるのが民事責任です。民事責任とは、他人(この場合は主に勤務先の企業)に与えた損害を賠償する責任のことです。

具体的には、企業から損害賠償請求を受ける可能性があります。損害賠償請求は、

  • 不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条):故意または過失によって他人に損害を与えた場合に、その損害を賠償する責任を負います。
    バイトテロは、故意による不法行為に該当する可能性が高いです。
  • 債務不履行に基づく損害賠償請求(民法415条):雇用契約上の義務(誠実に勤務する義務など)に違反した場合に、
    その違反によって生じた損害を賠償する責任を負います。

のいずれか、または両方に基づいて行われます。

損害賠償の金額は、バイトテロによって企業が被った損害の程度によって決まります。
具体的には、

  • 商品の廃棄費用
  • 店舗の清掃費用
  • 営業停止による損害
  • 信用回復のための広告費用
  • 株価下落による損害

などが含まれます。損害額は、数千万円から数億円に上ることもあります。

刑事責任

バイトテロの内容によっては、刑事責任を問われる可能性もあります。刑事責任とは、
犯罪行為を行った場合に、国から刑罰を科される責任のことです。

バイトテロで問われる可能性のある主な犯罪は、以下の通りです。

  • 威力業務妨害罪(刑法234条):威力を用いて、他人の業務を妨害した場合に成立します。
    例えば、店舗の営業を妨害するような動画をSNSに投稿した場合などが該当します。
    3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
  • 器物損壊罪(刑法261条):他人の物を損壊した場合に成立します。
    例えば、店舗の商品を壊したり、汚したりした場合などが該当します。
    3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料が科せられます。
  • 信用毀損罪(刑法233条):虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損した場合に成立する可能性があります。3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
  • 侮辱罪(刑法231条):事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合に成立します。
    例えば、SNSで特定の企業や個人を侮辱するような投稿をした場合などが該当します。
    1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料が科せられます。
  • 名誉毀損罪(刑法230条):具体的事実を指摘して、人の社会的評価を低下させた場合に成立します。3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科せられます。

これらの他にも、行為の内容によっては、さまざまな犯罪に問われる可能性があります。

未成年の場合

バイトテロを行った従業員が未成年(18歳未満)の場合でも、民事責任・刑事責任を問われる可能性があります。

民事責任については、未成年者であっても、損害賠償責任を負うのが原則です。ただし、未成年者が責任を負う能力(責任能力)がない場合は、親権者などの法定監督義務者が責任を負うことになります(民法714条)。

刑事責任については、14歳以上であれば、成人と同様に刑事責任を問われる可能性があります。ただし、少年法が適用され、成人と比べて処罰が軽減される場合があります。14歳未満の場合は、刑事責任は問われませんが、児童相談所に通告されるなどの措置が取られることがあります。

いずれにしても、未成年であっても、バイトテロは許される行為ではありません。

バイトテロを起こさないための対策

企業側の対策

バイトテロを防ぐためには、企業側の対策が不可欠です。従業員教育を徹底し、バイトテロのリスクや法的責任について、しっかりと理解させることが重要です。

  • 従業員教育の実施:採用時だけでなく、定期的に研修を行い、モラルやコンプライアンスに関する教育を徹底する。
    具体的な事例を交えながら、バイトテロが企業や個人に与える影響について説明する。
  • SNS利用に関するガイドラインの策定:従業員のSNS利用に関するルールを明確化する。
    勤務先や業務に関する情報の投稿を禁止する、
    個人情報やプライバシーに配慮する、
    などの具体的なルールを設ける。
  • 内部通報制度の整備:従業員がバイトテロを発見した場合に、
    匿名で通報できる窓口を設置する。
    通報しやすい環境を整えることで、
    バイトテロの早期発見・早期対応につなげる。
  • 職場環境の改善:従業員が働きやすい環境を整えることも重要です。
    コミュニケーションを活性化し、
    不満やストレスを溜め込まないような職場づくりを目指す。
  • 採用時の見極め:面接時に、応募者のモラルや責任感を見極める質問をする。
  • 罰則規定:服務規程などに、バイトテロ行為に対する罰則を明記する

従業員側の注意点

バイトテロは、従業員一人ひとりの意識と行動によって防ぐことができます。以下の点に注意して、責任ある行動を心がけましょう。

  • SNS利用のリスクを理解する:SNSは、情報が瞬時に拡散され、
    一度投稿した内容は完全に削除することができないことを理解する。
    軽い気持ちで投稿した内容が、
    重大な結果を招く可能性があることを認識する。
  • モラルと責任感を持つ:自分の行動が、企業や顧客、
    そして自分自身にどのような影響を与えるかを考える。
    社会の一員として、モラルと責任感を持って行動する。
  • 「自分は大丈夫」と思わない:「自分は大丈夫」「バレないだろう」という安易な考えは捨てる。
  • ストレスを溜め込まない:仕事や人間関係でストレスを抱えている場合は、
    信頼できる人に相談するなどして、
    適切に発散するように心がける。
  • 困った時は相談する:もし、バイトテロをしようとしている人を見かけたり、
    自分自身が誘われたりした場合は、
    一人で悩まずに、上司や同僚、家族などに相談する。

保護者・学校の役割

バイトテロを防ぐためには、保護者や学校の協力も不可欠です。家庭や学校で、情報モラル教育やSNS利用の指導を徹底し、子どもたちがバイトテロのリスクを理解し、適切に行動できるようにサポートする必要があります。

  • 情報モラル教育の実施:インターネットやSNSの正しい使い方、
    個人情報の保護、
    著作権、
    名誉毀損などについて、
    具体的な事例を交えながら教育する。
  • SNS利用の指導:SNSの利用時間や、投稿内容について、
    家庭や学校でルールを設ける。
    炎上やトラブルに巻き込まれないための注意点を指導する。
  • コミュニケーションの促進:子どもたちが悩みや不安を抱え込まずに、
    保護者や教師に相談できるような関係を築く。
  • アルバイトに関する指導:アルバイトをする際の注意点や、
    労働に関する法律について、
    事前にしっかりと指導する。

もしバイトテロの動画を見つけたら?

安易な拡散はNG

SNSなどでバイトテロの動画を見つけた場合、面白半分で拡散したり、コメントを書き込んだりすることは絶対にやめましょう。安易な拡散は、二次被害を拡大させる可能性があります。

例えば、

  • バイトテロを行った ব্যক্তি の個人情報が特定され、
    誹謗中傷や脅迫などの被害に遭う可能性がある。
  • 無関係の人が犯人と間違われ、
    風評被害を受ける可能性がある。
  • 模倣犯が現れ、新たなバイトテロが発生する可能性がある。
  • 動画を拡散することで、名誉毀損やプライバシー侵害に
    加担してしまう可能性がある。

また、拡散された動画は、完全に削除することが非常に困難です。
一度拡散されてしまうと、半永久的にインターネット上に残り続け、
関係者やその家族を苦しめることになります。

バイトテロの動画を見つけても、感情的に反応せず、冷静に対処することが大切です。

適切な通報先

バイトテロの動画を見つけた場合は、適切な機関に通報しましょう。

主な通報先としては、以下の3つが挙げられます。

  • 企業・店舗への通報:バイトテロが行われた企業や店舗に直接連絡し、
    動画の存在を知らせる。
    企業のホームページに問い合わせフォームがある場合は、
    そちらから連絡すると良いでしょう。
  • SNS運営会社への通報:動画が投稿されているSNSの運営会社に通報する。
    ほとんどのSNSには、
    利用規約に違反するコンテンツを報告する機能があります。
    この機能を利用して、動画を削除してもらうように依頼しましょう。
  • 警察への通報:バイトテロの内容が、
    威力業務妨害罪や器物損壊罪などの犯罪に該当する可能性がある場合は、
    警察に通報しましょう。
    最寄りの警察署に相談するか、「#9110」(警察相談専用電話)に電話しましょう。緊急の場合は110番通報しましょう。

通報する際には、

  • 動画のURL
  • 動画が投稿されているSNSのアカウント名
  • バイトテロが行われた日時や場所
  • その他、わかる範囲での情報

などを伝えましょう。

通報することで、企業やSNS運営会社は、動画の削除やアカウントの凍結などの対応を取ることができます。また、警察は、捜査を開始し、行為者を特定することができます。

通報は、匿名で行うことも可能です。ただし、警察への通報の場合は、捜査に協力するために、氏名や連絡先を聞かれることがあります。

まとめ:バイトテロは絶対にしない!させない!

この記事では、バイトテロの定義、具体例、法的責任、対策、そしてもし動画を見つけた場合の対処法について解説してきました。

バイトテロは、軽い気持ちで行った悪ふざけが、企業や店舗に甚大な損害を与え、社会的な信用を失墜させるだけでなく、行為者自身の人生をも狂わせる可能性のある、非常に危険な行為です。民事・刑事上の法的責任を問われることもあり、決して許されるものではありません。

企業は、従業員教育の徹底、SNS利用に関するガイドラインの策定、内部通報制度の整備など、バイトテロを未然に防ぐための対策を講じる必要があります。従業員一人ひとりも、SNS利用のリスクを理解し、モラルと責任感を持って行動することが求められます。

保護者や学校も、情報モラル教育やSNS利用の指導を通じて、子どもたちがバイトテロの加害者にも被害者にもならないように、サポートしていく必要があります。

もし、バイトテロの動画を見つけた場合は、安易に拡散せず、企業、SNS運営会社、警察など、適切な機関に通報しましょう。二次被害を防ぎ、問題を早期に解決するためには、冷静な判断と適切な行動が不可欠です。

バイトテロは、絶対に「しない」「させない」という強い意志を持ち、社会全体で撲滅していく必要があります。この問題について、深く理解し、一人ひとりが責任ある行動をとることが、健全な社会を築く上で不可欠です。